三本目。いつも通りネタバレありです。
「1500秒だっ!!」という圭一のオヤシロモード発動が非常に印象深いこのお話。これが発動してしまった時点で、圭一の主観がかなりアテにならなくなるので、正直今読んでも?な部分がかなり多かったです。圭一のドッペルゲンガー登場部分とか、北条鉄平殺害?未遂?とか。ドッペルゲンガーについては、前日に圭一からの電話を取った詩音(また魅音だと思われていたけど..)が圭一のアリバイ作りの為に気を利かせたのかな?と思いましたが、このお話は1回しか繰り返されなかったので、真相は不明ですね。
鉄平殺害は正直どうなんでしょうね。穴掘り返して出てこなかったってことは殺せてないってことなのかな?単純に死体がそこに埋まってないってだけなら良いのですが、あの一世一代の大立ち回りを丸々なかったことにされると切ないものがありますね。紗都子の壊れ方と最後のエピソードからして、本当は死んでるけど紗都子がいるものとして振る舞っている可能性もなくはない・・いや2日3日そう振る舞い続けることはないかもしれませんが、そういう風に沙都子が「壊れてしまった」姿しか見せないのは、多分、作者の最大限の優しさだと思うのです。圭一も献身的でしたから、最後の大災害最中の時でさえ、沙都子は壊れていたとしてもオヤシロモードにはならなかったですからね。目明し編にせよ何にせよ本当に強い子です。それだけに、悟史に帰ってきて欲しいという願いが歪んだ強さとなって、結果的に助けを拒んでしまったのが余計に悲しかったのですが。。
そのように沙都子と圭一の悲劇が物語の中心にあると見せつつ、このお話が皆殺し編の裏返しになっていることを示すエピソードも随所に見えましたね。梨花ちゃま殺害とかその代表格ですが、大石車蒸発とか、入江先生自殺とか、ああちゃんと雛見沢大災害が起こっているなぁ、と。ちなみに、初めて私が読んだ時点の予想は「災害自体は人の意思で意図的に起こしていて、本当に硫化水素云々が発生したのかはどちらとも言えない」って感じだったかと思います。
まず、100%の天災ってことにしてしまうとこの作品がミステリにならない(苦笑)その前に入江先生や梨花ちゃんをわざわざ物語から退場させる意味がなくなってしまう。次に、圭一が河原で生き残ったってことが引っかかりました(一番最後の記者との会話から)つまり硫化水素のような致死性のガスだけで村が死滅した訳ではない。圭一が最後に卵の腐ったような臭いと形容していることから、それが発生しなかったとも限らないけど、人の意思を介する以上そういう自然災害を発生させないと村を死滅させることができない訳ではない=人為的に殺して回ることも可能だな、くらいは思いました。ただ作中でも言及されていた通り、村の死滅という結果に対して得をする人間なんて雛見沢にいる訳がないので、せいぜい三四さんや入江先生が臭いなぁ程度で想像は留まりましたが。
所謂「オヤシロさまの祟り」を最悪の形で体現することを第一目標に置くような人間がいたならやりかねないですが、この手のことができそうな勢力がここまでの作中描写だと園崎家一択な上、そんなことを雛見沢の重鎮である彼らがやる訳がない。また、それだけの力量が園崎家にあるかどうかも、紗都子を救う救わないで圭一が魅音に直談判した件からかなり訝ってはいました。園崎家にそんな力はないという話は、掛け値なしの魅音の本懐だったと思うのです。紗都子の前には、きっと詩音から悟史の件で同じように詰問されていたでしょうし。園崎家が持つ力と、魅音が動かせる力には本質的に異なるモノってことなんだろうと。それこそ、圭一の1500秒と一緒で後先考えなければできたんでしょうけどね、銃器もあることだし(笑)