室見さんのワイシャツ姿は素直に格好良いと思うのですよ。表紙は七五三(蹴)


そんな訳で3巻は提案営業のお話なのですが、設計構築と運用フォローだけで軽く稼働率150%とか行ってそうなのに良くもまぁ提案活動なんかできたな、と恐ろしくなって・・あ、よくよく考えると身近にそういう例がいち、にい、さん、おまけに営業工数はゼr..本編行きましょう本編。

前回が割合ファンタジックでおまけに身内(社内)で話が完結していたってことで割合平和な雰囲気だったのですが、今回は結構危ないネタがゴロゴロ出てきます。以下一例。

「うん、私、昔ある会社の法務部にいたことがあってねー。そこが結構ややこしい事案扱ってたから、色々覚えちゃったのよ」
「へぇ……ちなみにどんな会社だったんですか?そこ」
「京都の花札屋さん」

「全部は覚えてないけど・・確かNBIとネットエフェクト、インヘリタンス、ラムダコムもいたわね。あとはもちろんJT&W、それから――」

「だったら最初からもっと独立系呼んでるでしょ。これだけの大型案件、入り込みたいベンダーは山ほどいるはずよ。大手の独立系――O商会やT情報だって声さえかければすぐ飛んできたんじゃない?」

そんな訳で子ネタも充実しているのですが、お話としても燃え萌えな展開で、大手SIerと一悶着あったり、工兵が僅かなヒントを貰う為に通い詰めて粘り倒し、弱小SIerの精鋭(梢さん・室見さん)と工兵が熟考の末起死回生の一手を見つけ、鉄火場を潜り抜け顧客や大手SIerの度肝を抜くという展開は鳥肌ものというか、トラブルシュートで原因を突き止めるその瞬間に似た高揚感を感じます。もちろんこれも壮大なるフィクションで、現実にはそんなことそう滅多に起こらないにせよ読んでいて清々しいのは事実でした。その後の工兵と室見さん2人の会話も良い感じでした。すっかり戦友。

萌えというかキャラクタにも色々面白いことがあって、この頃から室見さんの子供上司っぷり(+得意分野以外はサッパリ)が色々と露見していく中、上司としての責任を果たそうとして奔走する姿が**蝶・可愛らしい!!!**2巻まではキャラ属性が先行していた感のある彼女ですが、この巻辺りから急に人間らしくなってきたなぁと感じたりします。JT&Wに一時勤めていたこと然り、クライマックスでの技術で飯を食うことに対する執着然り。梢さんは梢さんで相変わらずだけど、でもやっぱり何だかんだで優しいし良い人ですよ!クライマックスでの彼女の決意表明も実に彼女らしくて良いというか、室見さんとタメ張れそうなのって彼女くらいしかいないですからね、色んな意味で。まぁ立場上室見さんメインになってしまうのは仕方がないとは言え、もうちょっと梢さんのエピソードが欲しかったり。毎回チョコチョコ顔を出してはきていますが。


工兵に一つだけ言いたいのは、室見さんと梢さんに対して言った『お願いします』というのは禁呪だよ?ってこと。室見さん・梢さん共々超優秀な上に無類のタフネス(梢さんについては明確な記載がないけど、室見さんとタメを張れるものと仮定)を誇り、かつ両者との強い信頼関係があるからこそのお願いなんでしょうけど、でも禁呪は禁呪だから禁呪足り得ることを忘れてはいけない。それは、禁呪を使うにはMPだけでなくHPも使うってのは勿論、1回のHP減少が仮に少なかったとしても後々に響いて、仕事のクオリティそのものも相応に落ちるってこと。室見さんがワーカーホリックなのは良いとして、そういう部分についての描写がないあたり本当のスーパーマンなのか、それともこれからなのかは見物。

それでも、最後に室見さんとこういう言葉を交わせるっていうのは、妬ましさを越えて純粋に格好良くて素敵なことだと思います。工兵が室見さんと肩を並べた瞬間、とも言えるかもしれません。(それ故に子供上司が露見してきたとも言えるかもしれませんが)そういう意味で、非常に印象深い巻だったと思います。

「私の技術と経験の全てをあんたに預ける。使いこなしてみなさい、桜坂」

ちなみに、私にとって最初の案件は正にその禁呪が乱発されているような所で、最初の一ヶ月はそれほど大したことなかったけど、それが二ヶ月三ヶ月続く中後に響く痛いミスも幾つかやらかしました。最初はそれを全て自分のせいだと思っていたのだけど今ではそうは思いません。自分のせいだと抱え込むのは簡単なことで、でもそれは思考停止と同じ。結局、私自身が完璧じゃないように、先輩も上司も完璧じゃないのです。頼りになるのは先輩なり上司かもしれないけど、最後に使えるのは自分ただ一人、という自覚を持てたのが一番得たものだったかも。後は修羅場慣れ。