読書第三弾。8巻にして最終巻。昨日取り上げたデート・ア・ライブと同じ作者で、こっちがデビュー作。以下読後感想。


「はじまりと終わりが集う場所」という言葉が非常にしっくりくる、綺麗なエンディングだった。

作風や描き方としては全然違うけど、伏線回収の仕方や作中の登場人物に対する姿勢は狂乱家族日記と近いものを感じた。登場人物を駒と考えるか自分の子供のように考えるかっていうのは小説を書く上で大きな命題の一つだけど、正しく?愛情を与えるとこういう風になるんだろうな、と感じたり。流石にこの分量だと伏線の回収はできても描写が充分にできなかった節があり、もうちょい宗司絡みの話が欲しかった!!というのが唯一の不満。

ところで、私がラノベを買う時は自分にハマりそうかどうかを慎重に吟味することにしているのだが、この作品は何か新しい作品を読みたいなぁとブラブラしていた時にラノベ系の何かのランキングで一位になったという帯文句を見て手に取った記憶がある。元々私はランキングを信用しない人間なので半分冷やかしというか、正直この作品にあまり大きな期待はしていなかったんだけど、読んでみてその認識が失礼であったことが良く分かった。

一番引き込まれたのはその作風。一言で言うと、とにかく引き出しを無茶苦茶に開けておきながら開けた引き出しを上手いこと使って話をまとめる、というもの。

この作品のメインの世界観は普通のSFもので設定もそれなりに作り込まれているのだけど、それとは別にノスタルジックなRPGの世界に主人公が放り込まれて魔王(駆真)になってみたり魔王と戦ったり、かと思うと神の末席に名を連ねたり遺跡から魔人を復活させてみたり幼児退行したり頭身が縮んだり等々、世界観がグッチャグチャになるようなことを1巻から平気でやっていた。小説の裏表紙に並んでいた詐欺だの予想外だの言葉も決して誇張ではなく。

そして、本筋の話のクライマックスでここぞとばかりに開けまくった引き出しを最大限に使用して一件落着!!に叩き込む。普通、これだけ引き出しを開けまくると本筋の話との収集が付かなくなったり不自然さが色々と生まれてきそうなのだが、それを設定の妙と登場人物のキャラクター性で上手く補完しているので、全然その辺が目立たない。更に開けた引き出しもそのままにすることなくきちんと世界を広げていって、最終的には無茶苦茶に開けたように見えた引き出しを1つに繋いでしまった時にはちょっと鳥肌が立った。初めて最終回ドラえもん(のび太開発者説)を読んだ時もこんな風に感じたような気がする。作者が1巻を書いた時点からそれを考えていたかは疑問もあるけど、そんな疑問を持つのが馬鹿らしくなるくらいに色んなものを巻き込んでいく姿勢が読んでいて清々しいことこの上なかった。

詰まる所、この作品は駆真の(変態的嗜好に基づく)性格というか姿勢に救われている所が大きいのですよね。これが無色透明の主人公だったら速攻で物語が破綻している所だわ、というか駆真含め登場人物でまともと言える人物がほとんどいない事実。だがそれがいい!!それ故に、もうちょっとキャラクタの深彫りをするというか表裏まで踏み込んで欲しいなと感じる部分も(特に宗司とか蒼穹園絡みで)幾つかあったのだけど、その辺は本筋との兼ね合いというように考えておきます。世界観と設定描写で圧倒するタイプなのかなぁと思わなくもないので、その分デート・ア・ライブが不安なのですが。。(そのへんの描写は避けて通れないように感じるので)

何であれ、楽しい作品を読ませて頂いてありがとうございました。デート・ア・ライブも期待してます。次はフルメタアナザーかなぁ。